日時:2012年1月14日(土)時間:13:00〜16:00
場所:牧野植物園 アトリエ実習室
講師:杉谷あきの / 渡邊高志
{プログラム}
①あいさつ/講師紹介,②講義第1部③講義第2部④講義第3部
講義第1部
講師>マスターオーガニックコーディネーター /杉谷あきの
内容>オーガニックの歴史と、第3章認証について
1.環境と調和した農業から「工業」的な農業へ
2.オーガニックの国際規格-CODEX
3.ポイントは利害関係のない第三者認証
講義第2部
講師>マスターオーガニックコーディネーター /杉谷あきの
内容>オーガニック(有機)食品のつくりかた
1.第三者機関(登録認定機関)とは
2. 有機JASの種類
3.有機農産物の作り方
講義第3部
講師>高知工科大学地域連携機構・教授/渡邊高志
内容>「マクロビオティックと漢方薬に用いられる薬用植物の考え方」
【講義レポート】
講義第1部では、先週の授業内容を、生徒の授業理解度の確認も含めて復習するところから始まりました。
講義は第1部・第2部を通して「オーガニックの歴史とオーガニックが社会的信頼を成立できる、その仕組み」について学び、オーガニックを取り巻く農業界のことや、社会問題やオーガニックの基準を作ることの重要性を知ることができ、貴重な講義であったと思います。また今日の講義でオーガニックについてより多くの興味や好奇心を抱き易くなりました。というのもオーガニックという制度を成立させるシステムを知る事で消費者と生産者と管理する側の三者の思想が垣間見れ、講義を含めオーガニックを考える上での重要なポイントが掴みやすくなったからです。
今日の講義でオーガニックという制度を支えているものが、オーガニックの基準と認定機関であることを知りました。講義では、まずは農業が歩んだ道程から、オーガニックの基準が作られ、認定機関が生まれるまでを第1部で学びました。私は農業中心に歴史を学ぶことは初めてで、「本来、農業は自然と調和しながら生産するものであった」という昔の農業の歴史の始まりの一文からとても興味がわきました。この農業の歴史を語る最初の一文は、今日の講義第三部で渡邊先生が話された、昔の医学者の「人体は自然の縮図である」という思考に関連した、食物の生産方法だろうと後で思いました。
私は、農業が生まれた時、すでに農業はオーガニックであり、食の安全と安心を求めてオーガニックを求める今の社会を思うとわだかまりを感じます。しかし、農業は歴史の中で生産性を求めるあまり、生物の生態を破壊し、環境破壊を生み、いくつも社会問題を引き起こしてきましたが、そのきかっけは生命を守るためであり、食糧安定生産を望んだからで、現在の繁栄に多大な貢献を果たしただろうと思います。さらに70億人にまで膨れた世界人口と食糧問題を考えると麻薬のような依存性が無いにしても、切っても切れない状況にあるのではと思いました。まだまだ農薬がもたらす社会問題は引き続きそうに思え、オーガニックの思想は暮らしの安全と安心を守る上でこれからさらに大切になるだろうと思います。ただし、食糧問題も見過ごせないと思う私は、オーガニックでありながら世界の人口を支える食糧生産などありえるのだろうかと疑問に思います。しばらくは生産量を求める農業と、安全安心という質を求める農業が並行する社会になるのではないでしょうか。
歴史の話しでは昔の農業風景を感じられるトピックがいくつか紹介されていました。例えば昭和30年代の日本の田んぼにはイナゴが沢山いて、農村地帯では学校行事の一環として「イナゴ取り」をしていたという面白いトピックがあげられていました。また、江戸時代では農作物の害虫は悪霊によってもたされるものとして、悪霊をわら人形に移し、村境に送り出す風習などが合ったそうで、夏の風物詩の怪談ででてくるわら人形が連想でき、歴史の面白さを再確認しました。
オーガニックという考え方が意識されるようになったきっかけは、農業が自然が持っている循環機能を上手に活用した持続可能な産業だった時代から、20世紀に入ってから科学的に合成された農薬や化学肥料にたより始めたことにより、環境汚染や破壊、健康被害といった社会問題を引き起こしたからです。意外だったのは、オーガニック農法の始まりは古く、今から90年近く昔の1924年に、近代農業に危機感を覚えたオーストラリア人の哲学者ルドルフ・シュタイナーが提唱した「バイオダイナミック農法」が始まりで、ドイツを中心にヨーロッパではオーガニック農法として主流となっています。またオーガニック農業団体の歴史も1940年代から始まり、オーガニックを社会に広げることがいかに難しいか、推測できます。1960年代に入ると食品の貿易が増大し、各国での農業生産の基準の違いからトラブルが増え、1962年にFAO(国連食糧農業機関)及びWHO(世界保険機構)が合同で食品の安全基準となるコーデックス規格を作成し、消費者の健康の保護、食品の公正な貿易の確保等を目的に国際的な政府間機関コーデックス委員会が設立されました。このコーデックスについては、農林水産省のコーデックス委員会のホームページに詳しく変遷が書かれ、厚生労働書のホームページから日本語版のコーデックス規格を読むことができます。少し覗いてみたところ、食品表示に関する内容から、食品検査に関する内容、補助食品、組み替えDNA動物由来食品の安全評価に関するガイドラインなど多岐に渡り、内容を理解するのは時間がかかりそうでした。日本は1966年に加盟し、現在184カ国が加盟しており、食品の貿易を行う上
で重要な規格であることが分かります。そのコーデックス委員会においてオーガニック食品の生産方法に関するガイドラインがつくられたのは発足から40年近く後の1999年で、日本では2001年にオーガニック農業の基準になる有機JASが法律で定められました。このオーガニック食品の生産方法に関するガイドラインは、1972年に発足した国際的な民間組織、IFOAM(国際有機農業運動連盟)の考えが参考になっているそうです。歴史を振り返ると化学的な農薬や、化学たい肥を使用した「工業的な農業」を推奨したのは政府だと思え、その考えに対抗するオーガニックの思想の始まりは民間レベルで叫ばれようやく政府レベルにも受け入れられたのであろうと思います。教本の中にちりばめられたキーワードから長い道のりを感じました。
国際的なオーガニックの基準が生まれ、それを利害関係のない第三者が基準に沿って作られたかどうかチェックすることでオーガニック商品は信頼を得る事ができます。第2部では、この第三者にあたる有機JASの認定機関の話しと有機農産物の作り方を学びました。学習すればする程に、有機農産物を作るには、想像している以上の苦労が付いて回りそうだと思いました。というのも、農薬などの汚染物質は撒いた時だけが問題ではなく、近隣から風や水にのって来るからです。また自分が持っている農地が昔どういう時であったかという地歴も重要になってきます。自分がオーガニックを始める前に汚染との戦いは始まっていて、オーガニックの知識を知った時には遅いのです。つまり、これからの食べ物の安全を守るのは私たちであり記録を残すことが重要であると言えます。昨年起きた原発事故による放射能汚染が、未来の食糧に与える重大な問題であったこともうなづけます。
なぜなら有機JAS認定は作物に対してではなく「ほ場=田圃や畑(作物を栽培するところ)」に対して行われるからです。1度の汚染が取り返しのつかない自体を招く事を知りました。有機JASの認証機関では「ほ場」に対し認定を行い、ほ場で栽培されたものは、全て「有機」の生産物になります。
有機農産物の作り方は、農薬や化学肥料を基本的に使わず、畑や田んぼのほ場の土の力を活かして、できるだけ環境に負担をかけない方法で栽培することが原則です。ほ場が有機JASに基づく認定を受けるには、2年以上農薬や化学肥料を使わない転換期間が必要で、栽培記録などを取っておくことが大切になります。また種や苗も基本的には有機JASに沿って作られている必要があり、食の安全を守るにはかなり注意力と忍耐が必要に思います。特に周辺から農薬や化学肥料の汚染を受けないようになっている必要があり、狭く隣と隣接した農地の多い日本では厳しい条件だと思います。また、周りの農家や近所のオーガニックに対する理解も必要だと思いました。日本の食品の安全を守るにはもっと社会的認知が広がることが大切であると感じます。
有機JASではたい肥づくりや、農薬を使わない病害虫防除方法や除草がまとめられており、必ずしも農業従事者だけが必要な知識では無いと思いました。自分たちが暮らす地域を守る上で大切な知識だと思います。考えてみれば、農業で生産されるものは食べるものだけでなく、衣服や化粧品の原材料なども含まれていて、非常に暮らしに深く関わっている事が分かります。また食に限らず、アトピーや花粉症といった化学物質が社会問題視される今、身近にある化学に対し教養を深める意味でも小学生レベルの教育段階から学べる環境が広がってもいいだろうと思いました。なによりこうした身近な食べ物や環境、衣類などから化学や生物に対する知識が学べられるとてもいい教材だと思います。
最後に授業中杉谷先生から、最近のオーガニックの潮流の中には、食べ物の安全に関心のある生産者や消費者、家族や本人にアトピーなど健康問題がある方といった人だけでなく、ファッション性を重視している流れもあるというお話から、オーガニックを取りまく社会が、昔も今も、食べ物の安全に対してだけ広がりを見せているわけではなく、売り手と買手からなる経済社会や、人口の増加に対する食糧生産の課題など、とても深く広がっおり、オーガニックという考え方が広がるには広い見識が必要だろうと思いました。
第3講義では渡邊先生の「マクロビオティックと漢方薬に用いられる薬用植物の考え方」の講義に移りました。マクロビオティックという言葉を時々耳にはしていましたが、あらためて調べてみると長寿法を説くものであり、人と生き物と環境のバランスを保ちながら健康の根源を支えるものだそうです。食事に関する作り方や食べ方の作法のようなものかと思っていたら、食材の品質基準なども決められていて内容もオーガニックの考え方と深く関わりあっていました。また「マクロビオティック」は、「マクロ=大きな」「ビオ=生命」「ティック=術、学」の3つの言葉から成り立ち、古代ギリシャ語を語源とした、「自然に即した命のあり方」という意味でした。またその歴史は古く思想家であり、食文化研究家であった桜沢如一が今から80年以上昔の1930年頃に提唱した手法です。オーガニックの思想が始まったのが1924年頃だった事実と照らし合わせると1920年代頃は農業や食文化が大きく変化したのではないかと思いました。1920年代について調べると第一次世界大戦後の時代で、アメリカでは狂騒の20年代と呼ばれ、またヨーロッパでは黄金の20年代と呼び名が付いており、それまでに無いほど、製造業が成長をとげ、消費者の需要とが増え、生活様式の変化があったようでした。戦後の食糧安定の渇望から大量生産の技術の確立と実現を繰り返し、急成長を遂げるその陰で、環境破壊や食文化の再構築を叫ぶ声が上がったのではないかと思いました。
漢方薬の話しの中で、古代の医学者は自然に対する観察力に優れており、「人体は自然の縮図である」という考え方を持っていたことが紹介され、その言葉が耳に残りました。私たちは自然のルールに従い生命を維持しており、自然に歩調を合わせて生活をいとめば健康な日々を送れるということ学び、オーガニックの考え方は幅広い分野に広がりを持ち、安心した生活を営む上で大切な知識であることを感じられました。